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『米体操チームドクターのセクハラ 大きな波紋呼ぶ』

■要約

・米国体操協会の元チームドクターが100人以上の選手に性的虐待を行っていた事件の影響で、複数のスポンサーが協会との契約を解除した

・被害者である元メダリストなども、協会をサポートすべきでないと声明を発表している

・元ドクターを雇用していたミシガン州は、被害者のカウンセリングのために1000万ドルの基金を設立した

■全文和訳

◎アンダーアーマー社、ハーシー社、P&G社は米国体操へのスポンサーシップを終了する

出典:ESPN、2017年12月16日

米国体操協会のスポンサーである2社は、年末に契約満了となる際、競技団体との契約を更新しないだろう。また、他のスポンサーは契約満了より2年半早く契約を終了することを決めた、とESPNは語った。

ESPNによると、最大のスポンサーの一部である、アンダーアーマー社、ハーシー社、P&G社は、今後もスポーツ界を揺るがすであろう性犯罪に影響された。金曜日、ある筋からESPNに、2013年から8年、2020年の夏の試合までスポーツアパレル、靴、アクセサリーを提供する契約をしていたアンダーアーマー社は、その取引を終えると語った。ハーシー社はESPNに、契約を切ってから16日間、重大な契約更新の交渉はなかったと述べた。P&G社はESPNに出した声明で、「我々は、自社の長期的なプライオリティーと、競技団体の継続的なアクションを考慮し、来年の春にパートナーシップの更新について判断する」と述べた。また、その声明によると、同社は米国体操協会が性的虐待の被害にあった方々すべての声に耳を傾けることを保証し、この極めて重大な問題に取り組むのに必要なすべての措置を講じることを望んでいる。

140人以上の女性が、元チームドクターであるLarry Nassar氏が性的虐待を行ったと訴えている。その多くはNassar氏に対して訴訟を起こしており、その一部は現在も連邦裁判所で審議中となっている。ミシガン州で未成年の女子に対して10回の性的接触があったとして、先月有罪判決を受けたNassar氏は、2015年に米国体操協会をクビになっているが、被害者の体操選手たちは協会の対応は十分ではない、医者としてまだ責任をとっていないと述べている。先週、米国体操協会は「Nassar氏の犯罪行為から原告を守る法的義務はない」として、全ての選手たちの主張を却下する旨を申し立てた。

金曜日、Nassar氏の被害にあった3名の女性(2000年のオリンピック銅メダリストのJamie Dantzscher 氏、元代表チームのメンバーであるJeanette Antolin 氏、新体操で3度の世界王者となったJessica Howard 氏)は、2016年末で契約を終えたP&G社とKellogg's社はスポンサーとして戻ってくることはないだろうという新聞報道が出た後に、声明を発表した。「P&G社とKellogg's社は、代表のチームドクターによる犯罪に対して責任をとることを拒否し、彼の犯罪行為を他者に警告しない体操協会をこれ以上サポートすることはできないと決定した。ハーシー社、アンダーアーマー社、AT&T社、ユナイテッドエアライン社、NBCスポーツ社は、アメリカの良心があるところにお金を使うべきであり、子どものアスリートの健康と安全を守ってくれる人物が協会の事務員やディレクターに就任するまでは、協会への金銭的なサポートをやめるべきだ」とその3名は声明で述べている。

ユナイテッドエアライン社は、「当社は米国体操協会も、いかなる個人競技も、その運営体制についてもスポンサードしていない」と述べた。ユナイテッドエアライン社は「米国オリンピック委員会と、米国を代表してオリンピックに参加する気高きアスリートをサポートすることを誇りに思う」と、ESPNに出した声明で述べている。声明の中で米国体操協会は、「体操選手や、体操競技、体操協会にたいしてサポートしてくれている全ての企業パートナーに大変感謝している」と述べた。また、「いくつかのスポンサーシップが契約満了となる一方で、アスリートの安全などに焦点を当てた我々のコミットメントに基づく新たな契約の機会を議論しているところだ」と米国体操協会は述べた。「我々は、全ての企業パートナーとの長年にわたるパートナーシップを重要だと思っており、彼らと協力することで選手の生活を良くしていくことを楽しみにしている」

AT&T社とNBC Sports社からもコメントを求めたが、迅速な回答は得られなかった。「米国体操協会のスポンサーは普通こどもたちやその保護者たちに自社製品の販売を行う」と、John Manly氏は語った。John Manly氏は、2012年のオリンピックで金メダルをとったアメリカチームの一員であるDantzscher氏、McKayla Maroney氏を含む106名のNassar氏の被害者を代表する弁護士である。「我が国は政治的には分断されているかもしれないが、統一されていることは性犯罪にたいする意見である。性犯罪は卑しく、受け入れがたい行為であり、どのような企業もそれと関連しようとは思わない」

米国体操協会の幹部の一人であるSteve Penny会長は、性犯罪の告発を受け仕事を失った。Penny会長が退いた3カ月後の6月、ウォールストリートジャーナルは、彼が100万ドル近くの退職金を受け取ったと報じた。Manly氏は訴訟の被告としてあげられたUSOCが、道徳的な理由だけでなく、将来的な金銭的利益を保護するためにこれ以上のことをしていないことに驚いたと述べた。弁護士は被害者への補償を求めているが、Manly氏は訴訟において、いつ何があったか知っている被害者について、正確に理解するという目的を果たすまでは、その議論には応じないと述べた。金曜日、Nassar氏が雇われ、被害者を虐待していたとされるミシガン州は、Nassar氏の被害者をカウンセリングの準備のための1000万ドルの基金を創設したと発表した。

今月早々に、Nassar氏は子どもへの性的暴行の罪で懲役60年の判決を受けた。

■JCAのPoint Of View

2017年10月、ニューヨークタイムズ誌とニューヨーカー誌が、ハリウッドの大物映画プロデューサーだったハーヴェイ・ワインスタイン氏の性的虐待を報じました。さらに、女優のアリッサ・ミラノがSNSでワインスタイン氏の虐待を告発しつつ、同じ経験をした人に""me too"というハッシュタグをつけての返信を呼びかけました。それ以来、米国体操協会の元チームドクターの件も含めて、世界中で告発が相次いでいます。

日本では2011年に起きた、元柔道金メダリストの内柴正人受刑者による事件(2014年に最高裁で懲役5年の実刑判決が確定)が有名です。九州看護福祉大のコーチ時、合宿中に未成年の教え子に飲酒させた上で、性行為に及んだとされています。指導者の立場が強い日本のスポーツ界では、内柴事件は氷山の一角であり、同様のセクハラや性的虐待が起きている、被害者が泣き寝入りしているという見方もあります。

ナショナルチームなどにおいては、選手選考も含めてコーチが権威となっている場合があり、選手が競技人生を考えてセクハラを受けても告発しないケースが世界中であります。このようなセクハラ行為を未然に防ぐ、アスリートを守るための体制や法整備を進めるとともに、被害を受けた選手が安心して告発できる仕組み作りも必要です。


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